東洋大学社会学部で「新聞活用プロジェクト」開始

2018年5月21日

(文化通信5月21日付8面に「新聞活用プロジェクト」を発案者した東洋大学社会学部・薬師寺克行教授のインタビューを掲載しています)

 東洋大学は4月から、社会学部メディアコミュニケーション学科で、読売新聞社、朝日新聞社とタイアップした教育プログラム「新聞活用プロジェクト」を始めた。同学科1年生全員(約160人)の自宅に1年間、朝日新聞または読売新聞を教材として配達し、授業で活用することで専門教育を深める。配達される新聞の購読料は東洋大が全額補助する。また、両社の記者らによる講義や講演、職場体験などのプログラムも、年間スケジュールに盛り込まれている。新聞活用プロジェクトの概要を紹介する。

 東洋大のメディアコミュニケーション学科は、「現代社会の特性を『メディア』と『情報』を手がかりとして解明することを学び、これからの社会をリードしてメディア業界やICT業界で活躍できるスペシャリストを養成する」ことを目的にしている。同学科で学べるのは情報学系、社会情報学系、マスコミ学系で、学生は各自の関心に応じて、学ぶ研究領域を設定できる。

 1年生はまず、「メディアコミュニケーション学基礎演習(基礎ゼミ)」や「情報学基礎論」「メディアコミュニケーション学基礎論」といった授業を履修し、メディアコミュニケーションについての知識と技能などを、初級から学ぶ。今回の新聞活用プロジェクトは、その1年生に入学当初の段階から新聞を教材として自宅に配達し、彼らに新聞を読むことを義務づける。授業では彼らが新聞を読んでいることを前提に、新聞を活用した授業を展開する。

 まず、教材として配達される新聞を毎日読むこと、国内外のニュースに日々触れることを習慣化させることから始め、情報の収集の仕方や、それを踏まえた物事の考え方などを身につけさせていくことが目的。学生が自分たちから積極的に情報に接することで、主体的に取捨選択しながら自らの思考につなげる「メディアリテラシー」を身につけ、教養力の養成を目指すとしている。

 また、読売新聞と朝日新聞という全国紙2紙を教材として使うことで、記事や社説などを比較しながら読むこともできる。それによって新聞を多角的に理解・分析するとともに、他のメディアを含めた研究も深化させることなども狙いにしている。

 新聞活用プロジェクトの年間スケジュールは別表のとおり。初回の授業では読売新聞と朝日新聞の社員を講師に、両紙の紙面構成や新聞ができる過程などを説明。新聞を使ったグループワーク「まわし読み新聞」が行われた。

 今後も、両紙の社員が講義やパネルディスカッションを行う。両紙のベテランジャーナリストによる講演、職場体験も行う。数多く用意された講演や討論では、一方通行で話を聞くだけでなく、講師やパネリストに質問できる時間を長く設ける予定。両紙の職場体験に参加できる学生も全員ではなく、競争原理を加える。希望者を募ったうえで担当の先生に選考してもらい、それぞれ参加者を20人ずつに絞る。

 1年間にわたって1年生の自宅に配達される朝夕刊は、半数の学生に読売新聞、もう半数に朝日新聞を配達している。前期と後期で配達する新聞を入れ替え、2紙をより比較して読めるような仕組みにしている。

 新聞の購読料は東洋大が全額補助しており、学生または家庭の負担はない。ただ、東洋大は新聞代だけを払っているわけではない。読売新聞社、朝日新聞社の2社とは、新聞の購読料や配達だけでなく、講師派遣や講演、職場体験といった1年間で実施するプロジェクト全体に対して業務委託契約を結んでいる。

 また、メディアコミュニケーション学科では、今回の新聞活用プロジェクトだけでなく、新聞やテレビ、出版、広告といったメディア業界で働く経営幹部らを講師に招く「メディア・キャリア論」の授業も行っている。

 スタートした昨年度は、朝日新聞社の渡辺雅隆社長や岩波書店の山口昭男前社長のほか、日本テレビ、博報堂、日本経済新聞、講談社、NHKといった大手企業の幹部13人を各回に講師として招き、各メディアの内情などを聞いた。今年度も日本テレビ「NEWS ZERO」メインキャスターの村尾信尚氏を招いたほか、毎日新聞社の小松浩主筆やBSジャパンの石川一郎社長など、各メディアの有名どころを講師に迎える予定。