文藝春秋『辞令』、3次文庫が3カ月余で14万部に

2018年3月8日
 文藝春秋が2017年11月9日に発売した高杉良の文庫『辞令』が、3次文庫化にも関わらず3カ月余で6刷14万3000部とブレイクしている。大きな宣伝やパブリシティーもない中で、書店の積極的な展開で売れ行きを伸ばしているようだ。

 同作は1988年に集英社から単行本が刊行され、91年に同社から文庫化、98年には新潮社が文庫化したが、長い間品切れ状態となっており、今回の文春文庫は3次文庫になる。

 同社が昨年3月に刊行した高杉作品の文庫『勁草の人』の動きもよかったこともあって初版は2万部だったが、初速が良く発売後すぐに3000部を重版。さらに『勁草の人』を上回る売れ行きを示したことから3~5万部と版を重ねている。

 4刷からは担当編集者の瀬尾巧氏による手書きPOP風の大型帯(天地75?)を付けて出荷を開始。売れ行きに拍車を掛けた。

 2月28日に日本経済新聞の定期広告の半分近くを使って掲出し、3月に入って西武鉄道線沿線でドアステッカーの掲出を始めたが、それまではほとんど広告やパブリシティーはなかった。

 「当初手に取った読者層が、60~70代の高杉ファンだったこともあり、ツイッターなどでの口コミはほとんどなかった。ビジネス街を中心とした書店さんの展開によって広まった」と同社文庫・新書営業部・平嶋健士次長は述べる。

 1月末時点での売れ行きが良い書店を見ると、トップがブックエキスプレスエキュート品川サウス店(品川区)、2位がブックスタジオ新大阪店(大阪市)、3位が丸善日本橋店と、駅ナカやビジネス街が目立つ。

 大手ネット書店がベスト10位以内に入っていないのも、「空中戦ではなく店頭展開で売れている」(平嶋次長)ことを示している。

 「辞令」というシンプルなタイトルが読者の目を引いたと見られることから、人事異動シーズンの3、4月には広告展開とともに、さらなる販売促進に力を入れる。

□文庫判/416?/本体850円