マガジンハウス、吉野源三郎の名著をマンガ化

2017年10月2日
 マガジンハウスが8月24日取次搬入で発売した吉野源三郎の名著をマンガ化した『漫画 君たちはどう生きるか』は、発売1カ月で10万部と売れ行き好調だ。9月中旬以降テレビでの露出も増えていることから、さらなる伸びが期待される。

 同書は岩波書店の雑誌『世界』創刊編集長で岩波新書の発案者としても知られる著者が、1937年に新潮社の日本少国民文庫の1冊として刊行した。

 戦後、新潮社、ポプラ社などから再刊され、82年に岩波文庫に収められた。現在、岩波文庫とポプラポケット文庫が流通しており、岩波文庫版は累計121万部、ポプラ社版も単行本と文庫累計で30万部を超えている。

 『漫画 君たちはどう生きるか』は同書を現代の若者が手に取りやすいよう羽賀翔一氏がマンガ化。また、文章を読みやすくした活字の新装版も同時発売した。

 マンガ版は初版1万5000部だったが、宣伝する前から書店店頭で売れ始め、9月21日に5刷5万部を決めて10万部に達した。

 この初速は「129万部になっている『世界がもし100人の村だったら』(池田香代子)がテレビで取り上げられて爆発する前と同じぐらい」(営業局・浪花寛通局長)と、ミリオンセラーをも予感させる動きだ。

 8月15日から先行販売し、200冊を超えた丸善日本橋店・篠田晃典店長も、「絵に力があり、読ませる部分も多く、これまでのマンガものとは違った新しい本という感じがする。お客様も持っていたいと思うようだ。購入者の年齢性別も広がってきており、幅広く売れるだろう」と手応えを語る。

 広告は9月3日に読売新聞、16日に朝日新聞に半5段、その後ブロック紙に出稿したのを手始めに、重版に合わせて30日には日本経済新聞に全5段を掲出。

 発売直後に糸井重里氏がツイッターで拡散するなど注目を集めており、テレビでは23日に「王様のブランチ」のランキングで取り上げられ、10月にかけ露出が増える。

 同書がこれだけ売れていることについて、編集を担当した同社執行役員第一編集局長兼書籍・ムック出版局長兼書籍編集部編集長の鉄尾周一氏は、30代の編集部員が複数、同書を愛読しているのを知ったことが企画のきっかけだったと話し、「いまの若者にも通じる普遍性があり、同時にかつて読んだり、存在は知っていた世代が手に取っている」と説明する。

 著作権を継承する吉野氏の子息から許諾を取り、マンガ化はエージェント会社コルクに依頼して編集者の柿内芳文氏が担当。

 ビジネス書などにある「わかりやすくするため」のマンガ化ではなく、作家がキャラクターを作り、ストーリーマンガとして制作。2年がかりで完成させたという。

□漫画版=A5判並製/320?/本体1300円

□新装版=四六変形判並製/304?/本体1300円