文春、92歳料理研究家のエッセイ集が露出相次ぎ全国区に

2017年10月11日

 文藝春秋が7月末に発売した92歳の料理研究家・桧山タミさんによるエッセイ集『いのち愛しむ、人生キッチン』が、九州地域で売れ行きを伸ばし6刷8万4000部になっている。これまではほぼ半数が九州の書店で売れているというが、他の地域でも火がつき始めている。

 桧山さんは福岡県で50年間にわたり「桧山タミ料理塾」を主催。いまもその人柄に惹かれ、塾には20代から70代まで幅広い人々が通っている。

 同書は料理や食にとどまらず、タミさんの人生や生き方をまとめた語りおろしエッセイ。編集を担当したライフスタイル出版部・馬場智子部長は、「仕事や家庭、育児に追われる女性たちを『がんばらなくていいの』とやさしく包んでくれる言葉に溢れ、迷っている女性を支えてくれる本」と述べる。

 初版部数は9000部。7月26日取次搬入で発売し、当初は静かなスタートだったが、8月11日にNHKが「ニュースウオッチ9」でタミさんを紹介したことで一気に売れ行きが加速。

 続いて同16日には九州朝日放送でも紹介されるなど、地元を中心にメディア露出が続いている。

 これにあわせて文春では8月7日に2刷1万5000部、同25日には3刷2万部と版を重ねたが、「作り部数の半数ほどを九州の書店さんに配本する勢いだったが、お盆が重なったことで品切れになり、お叱りもいただいた」(営業部・大倉まゆみ統括次長)ほどの反応だったという。

 その後も売れ行きは良く、多くの書店が話題書、新刊コーナーで大々的に展開。「九州の書店さんたちの熱に引っ張られる」(大倉次長)ように部数を伸ばしている。

 発売直後から大きく展開してきた丸善博多店・徳永圭子さんは、「テレビの影響も大きかったが、指南しながらも最後は『むりをしないで』とやさしく語りかけている内容が受けているのでは。昔からのタミさんファンから、普段は料理本を手に取らない人にまで広がっている」と述べる。

 一方、ジュンク堂書店福岡店・廣永麻理絵さんは「最初から元棚以外でも多面展開している。地元本には力を入れているので、もっと長く売っていきたい」と話す。

 文春では「アラハン本」ということで、読者は高齢と予想していたが、30~40代女性も多く、「世代によって面白かったと感じる章が違うなど、いろいろな感覚で手に取ってもらえている。広がりがある」と馬場部長。

 9月29日には関西の朝日放送でも取り上げられたことから、関西圏での売れ行きも良くなっている。「他店のデータをみると、全国的に女性客が多い店舗では売れ行きが良い」(徳永さん)といい、他地域でのさらなる拡大も見込まれる。

 大倉次長も「書店員さんの応援で売れた、ということがとても嬉しい。本の力と書店員さんの力を感じている」と期待を示す。