ジュンク堂書店、自社在庫を管理するSRCを開設

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2012年1月20日
丸善CHIグループのジュンク堂書店は昨年11月から、店頭に配本される新刊の一部を自社在庫として保管、必要に応じて各店に配送する試みを開始した。「以前から、取次の在庫で必ずしも店頭の需要をカバーしきれないという問題があったが、結局は自社で在庫を持たなければ充足できない。また、当社は店舗が増加して、店間移動も煩雑になったため、倉庫を持つことを考えた」と、岡充孝社長は今回の試みの発端を説明する。また、在庫を持って迅速に補充できるようになれば、オンライン書店等に対抗できると同時に、店舗のストックを減らして、返品減少につながる効果も期待しているという。在庫の保管場所は、取引取次の一つである大阪屋東京本部3階の1300平方?を賃借。「書籍流通センター(SRC)」と名付けている。グループである大日本印刷(DNP)の物流施設を利用する案もあったというが、「当初から大きな倉庫を持つと管理コストもかかるので、まず実験的に大阪屋の空きスペースを借りることにした。将来的には独立した倉庫を利用することも考えている」という。SRCの1フロア上は、同社のオンラインサービスを手がける大阪屋との合弁会社?HONが利用しているスペース。在庫管理や出庫などSRCの業務はHONに委託している。SRCには、大部数商品のうち、池袋本店、大阪本店、福岡本店、新宿店への配本分から2割程度の部数を店舗に送らずに在庫する。在庫点数は1月19日現在で2155点、約9万冊。商品は大半が大阪屋経由で入荷するが、専門取次などからの納品もある。各店舗へは宅配便で送り、翌日には着荷するという。当初、出版社が大量に配本する売れ行き良好書籍からスタートしているが、将来は同社が得意とする専門書の在庫も揃えていくという。ただ、そのためには、出版社との間で支払いなどの条件調整も必要になるため、試行錯誤を重ね、実績を積みながら準備を進める考え。また、現在はジュンク堂書店の店舗のみで利用しているが、今後は同グループの丸善店舗にも拡大する予定だ。この試みは、書店が自らの負担で在庫を持つことで、従来の取次依存体制では実現しにくかったサービス向上に取り組むものだといえる。欧米の大手書店などではよくみられ、日本でも外商用在庫などでは行われる形態だが、店舗用在庫をこれほど大量にストックするケースは珍しい。