【続報】書籍検索制度、各団体が宣言・声明など発表

2009年11月5日

 日本書籍検索制度協議会の発足に伴い、協議に参加する各団体は声明・宣言を発表した。日本書籍出版協会は声明の中で、同制度を構築する前提として、「出版社の権利の法的裏付け」が必要だと指摘。さらに、現在の出版活動を抑制しないよう「既存の出版物流通業務・電子配信事業と有機的に機能する体制をつくる」必要も指摘している。

 日本文藝家協会は「宣言」で、Googleのブック検索に触れ、同サービスが無断複製であり、一私企業が書籍データを独占的に運用することは問題だと指摘。その上で、「書籍の永久保存とデータベース化の必要性は、誰もが認めるところ」とし、「著作者、出版社、流通業者、送信事業者、図書館、法律家などが結集して、国の協力のもとに、主体的にシステムを確立することが急務」との姿勢を示している。

 協議会で座長を務める松田政行弁護士(森・濱田松本法律事務所)は出版社の法的地位の確立について来春公表する提言で「求められる法制度を示す」と言及したほか、知財実務者の養成の重要性を指摘して、自らがその任に当たると述べている。

 一方、国立国会図書館・長尾真館長は、この協議を「歓迎すべきもの」とし、同図書館として「協力・協調し、当館が納本制度によって蓄積してきた図書資料という文化遺産が日本中の人々に広く活用されることになるよう努力したい」としている。

 出版者の権利については、記者会見で文藝家協会・三田誠広副理事長も著作者の立場から「出版社はリスクを負っているので、何らかの権利を持つ必要があると考えている。隣接権とは性格が違うが、版面送信権のようなものが必要だと思う」と理解を示した。

 文藝家協会、書協、松田弁護士は宣言・声明で協議に参加するにあたっての目的や条件を、次のように示している。

 社団法人日本文藝家協会 理事長・坂上弘

 宣言

 日本は出版大国です。過去から現代に至る膨大な知識・芸術をのせた書籍は、国民全体の文化遺産というべきでしょう。しかし残念ながら、全国の公共・大学図書館や書店、取次、出版社などが保有できる書籍の量には限度があり、読者が接することのできる機会には限りがあります。絶版となった書籍、入手困難となった書籍は、読者との接点が断たれてしまうのが現状です。

 米国google社が作成した書籍データベースは、その作成過程で無断複製などの問題点があると同時に、米国の一私企業が世界中の書籍データを独占的に運用することにも、大きな問題があるのではないかと指摘されています。

 しかし国民の知る権利、本を読む権利を保証するために、過去の文化遺産である入手困難な書籍を検索し、容易にアクセスできるような、書籍の永久保存とデータベース化の必要性は、誰もが認めるところです。こうした事業は、私企業に任せるのではなく、国の事業として推進されるべきものだという意見もありますが、著作者、出版社、流通業者、送信事業者、図書館、法律家などが集結して、国の協力のもとに、主体的にシステムを確立することが急務ではないかと、わたしたちは考えます。

 幸いなことに、日本には国立国会図書館があり、膨大な量の書籍を保有すると同時に、デジタルアーカイブの作業も推進され、また日本で出版されるすべての書籍を対象とする検索システム「Japan Book Search」の構築も準備されています。いまのところ、アーカイブされた書籍を検索し、閲覧できるのは、国立国会図書館内に限られます。しかしこの貴重なデータベースは、国民の共有財産というべきでしょう。このデータベースを、地方の公共図書館や一般の読者が容易に利用できるようにすると、書籍の出版や流通に関わる人々、および著作者に損害が出るのではないかと懸念されていることは事実ですが、国民の貴重な文化遺産である過去の著作物に接することで、読者や研究者の見識が深まれば、現代および未来の出版文化の発展につながるのではと期待されます。

 出版関係者や著作権者に損害を与えず、むしろ出版文化を保護育成しながら、国民の文化・学術・教育の期待に応える日本独自のデータベース活用のシステムを確立し、さらに国会図書館の協力のもとに、より効率のよい検索システムを構築することは、まさに焦眉の急であり、果たさなければならない社会的責任だと、わたしたちは確信しています。そこでわたしたちは、日本における書籍検索システムのあり方を検討し、高い透明性をもった現実的で具体的な検索とデータ配信の業務のモデルを提出するために、関係諸団体によるコンソーシアムを設立し、又は関係官庁が設置する委員会に参加します。さらにわたしたちは、以下のような提言をしたいと考えます。

 ・日本の出版文化を守り発展させることによって、世界各国の文化発展に貢献する仕組みを確立する。

 ・著作権者、出版社、書籍流通業界の経済的利益の基盤を確立する。

 ・図書館の公共性、利便性を確立し、全国津々浦々で学術文化発展に寄与できる基盤をつくる。

 ・IT技術の活用を文化立国の基盤におく。

 ・データベースの活用にあたっては、常に障害のある人々の読書権確立を考慮する。

 ・著作権法など書籍や出版に関する法令の適法性を確保し、必要ならば新たな法制度について提言する。

 わたしたちは、日本における書籍検索システムの確立と、データ配信のシステムを充実させることによって、国民が書籍という文化遺産を享受し、さらなる出版文化の発展が期待できるものと確信し、国および国民の理解と協力を得るために、この宣言を公表します。

 社団法人日本書籍出版協会 理事長・小峰紀雄

 声明

 わが国は年間7万点を超える新刊書籍を発行し、書店で入手できる雑誌も3千タイトルを超える世界で有数の出版大国である。これらの出版物ひとつひとつはそれぞれが貴重な文化の所産であり、これらの出版物によって伝達される著作物等の情報が安定的に保存・提供され、また長期にわたり入手手段を保障されることは国民の利益に資するものである。これは、文字・活字文化振興法の精神にも適うものであるといえる。

 この意味から、我々出版者は、日本において出版される書籍を対象としたデジタルアーカイブが構築され、そこに納められた出版物が適切な方法で利用される環境が確立されるべきであると考える。

 このたび国立国会図書館におけるデジタルアーカイブの充実に伴うデジタル情報の活用を図るため、関係権利者ならびに関係省庁によるコンソーシアム設立を目指して協議が開始されることとなり、当協会としてもこの協議に積極的に参加し、出版文化の保護と発展に資する仕組みづくりに協力していくこととした。

 もとより、われわれには古来作り上げてきた印刷媒体の出版物の伝統があり、この伝統的な出版文化は継続して著作者、出版者による著作物情報伝達の礎として今後も充実・発展を期していくべきものである。しかし、これと同時にデジタル情報の流通によって、印刷物では考えられないような取り扱いの簡便性、迅速性、網羅性、検索の容易性など、計り知れない利便を我々は手にすることができる。これらを活用し、著作物が広く国民に伝達されることを可能にしていくことは、国の責務であるとともに出版にかかわる著作者、出版者、図書館をはじめとする関係者の社会的責任である。

 当然のことながら、デジタルアーカイブの構築ならびにデジタル情報の流通を実現するためには、その前提として、今後も良質な出版活動が継続され、新たな出版物を適正に発行、流通する体制が維持されることが絶対条件である。したがって、以下の点を考慮に入れた環境整備が必須であると考える。

 ・日本の出版文化を守り発展させることによって、日本のみならず世界の文化発展に貢献する仕組みを確立する。

 ・出版者の権利の法的裏付け、および、それに基づく関係者間契約実務のルールを確立し、出版者の経済的基盤を損なうことなく、出版者が新たな出版物を継続的に世に送り出す体制を整える。

 ・新たなデジタル情報の提供形態が、著作者の創作意欲を低下させたり、出版活動を抑制したりすることのないよう最大限の配慮を行うとともに、既存の出版物流通業務・電子配信事業と有機的に機能する体制をつくる。

 ・デジタルアーカイブの活用にあたっては、全国民がひとしく享受できる環境を整えるよう配慮する。

 弁護士・松田政行(森・濱田松本法律事務所所属)

 宣言

 書籍・出版関係者は、日本の高い書籍文化を守り発展させるために、日本で出版される書籍を対象とするデータベースを構築しこれをネット配信し国民がより広くより多くの文化を享受できるデジタル情報の利用環境を確立するべきである。

 情報技術の発展によって、すべての情報が集中管理される状況がある。日本の文化、芸術、文芸、科学、技術その他すべての思想やその表現である著作物の情報が他国に集中管理されることになれば日本の書籍文化と産業は、大きく変容することになるだろう。これをこのまま放置することになれば日本の文化的独立は守られない。今、デジタルコンテンツ化の技術と国民の要請によって出版業界に変革が求められている。これらは日本の文化人と産業界が主体的に取り組まなければならない問題であると考え、松田自ら他3団体に発意し、「日本書籍検索制度提言協議会」の設立を求めた。

 構築される書籍のデジタルアーカイブの利用の促進を制度化し、適正に運営しうる業務として確立しなければならない。これは、国の責務であるとともに書籍・出版にかかわる著作権者、出版者、流通業者、送信事業者、図書館、法律家の社会的責任である。

 そこで、日本における書籍検索制度のあり方を検討し、業務として構築することを提言するために、関係諸団体等による上記の協議会を設立する。この提言は以下の内容を含むものとしなければならない。

 ・日本の書籍文化を守り発展させ、日本の文化的独立を確かにする。

 ・著作、編集、出版、流通に関する業務の経済的利益を守る。

 ・国立国会図書館を中心として図書館のもつ公共性、利用者の利便性を確立し、これと著作者、出版社の利益と調整をはかる。

 ・書籍検索制度は、障害のある人々のアクセスを保障するものでなければならない。

 ・著作権法その他書籍の利用に関する法令の適法性を確保し、国立国会図書館のあり方、出版社の法的地位など求められる法制度を示す。

 ・上記各内容はいずれも法的問題を含みその具体的解決が求められ、提言後に予定されるコンソーシアム、事業を組み立てる協定・契約、種々の紛争解決等に著作権法その他の法律知識が必要となる。これに対応しうる知財実務者の養成を行う。これは、松田の責務であると考えている。

 日本における書籍検索制度の構築が重大な国益であると考え、他団体とともに国及び国民の理解と協力を得るために本宣言を公表する。

 国立国会図書館館長・長尾真

 日本における書籍検索制度を確立するための検討組織の発足にあたって

 このたび日本における書籍検索制度のあり方を検討する組織が発足する運びとなったことは、国立国会図書館の構築しつつあるディジタルアーカイブを中心として、国民の共有財産と言える書籍の自由な検索と活用に道を開こうとするもので、歓迎すべきものであります。

 このシステムが著作権者や出版社などにとっても好ましいものであり、日本の出版文化の一層の発展に貢献するものとなることが大切であります。

 国立国会図書館としても、こういった取り組みに協力・協調し、当館が納本制度によって蓄積してきた図書資料という文化遺産が日本中の人々に広く活用されることになるよう努力したいと考えております。