JEPA著作権委員会、緊急セミナー Google和解を弁護士

 | 
2009年4月24日
日本電子出版協会(JEPA)著作権委員会は4月16日、東京・千代田区の森・濱田松本法律事務所で、同事務所・松田政行弁護士、増田雅史弁護士がGoogleブック検索和解の影響、内容などについて解説する緊急セミナーを開催した。 JEPA顧問弁護士でもある松田弁護士は、和解の手続きを説明するとともに、今回の問題について、「日本人の感覚では、条約や協定でつくっていく国際的なルールを、ニューヨークの裁判所での和解手続きでつくってしまうことが最大の問題だと思う」と述べ、和解問題が与える影響についても、「日本のコンテンツプロバイダーの仕事に影響を与えないわけがないと思っている。和解内容を細かく検討することによって、ある程度の戦略が出てくるかも知れない」と述べた。増田弁護士は和解の内容と流れについて、?和解への参加とデータベース(DB)への搭載?Googleによる書籍等の利用と対価の支払い?権利行使の主体等、に分けた解説があった。和解参加では、対象が09年1月5日までに通常の型で出版された書籍で、その著者、出版社が関係するが、ベルヌ条約があるため日本も関係し、5月5日までに和解からオプトアウト(除外)する手続きをとらなければ自動的に参加したことになると解説。09年7月以降に和解効力の発効日が定められ、その日以降Googleが和解対象書籍の使用権利を得て、権利者が収益の分配を受けるが、5月5日までに請求せずにDB搭載された場合は、10年1月5日までの請求手続きで一時金が支払われるとし、11年4月5日までに書籍を除去する手続きをとることができることとあわせて、「和解に参加しなくてもDBからデータが削除されないため、和解に参加した方が有利とされる理由はここにある」と指摘した。 一方でGoogleは、表示使用、非表示使用、広告使用、図書館での使用、コーパスとしての使用ができるとし、表示・広告使用以外は、DBから削除しなければ使用されるとした。権利行使の主体は、米国内の既存経路で市販されているかで分かれ、市販書籍は刊行中書籍、市販されていない書籍は絶版書籍に分類され、それぞれについて、DBから除去する権利、表示使用に含有するか排除する権利、広告使用から排除する権利、サービスの収益を受ける権利の主体を説明した。また絶版書籍の場合、職務著作、著者に権利が復帰している、その他の場合に分かれるとし、特に米国での著者が出版社に権利を譲渡して行う出版と権利譲渡をともなわない日本の出版契約を対比し、「日米の出版慣行は大きく異なるが、現実に流通しないのであれば権利は復帰していると思われる」と述べた。この後松田弁護士から、著作権法の一部を改正する法律案の概要について解説があった。最後に増田弁護士は、「権利者は黒船が来たと捉える向きが非常に強かったが、権利行使の手続きがある程度担保され、収益の分配があることを考えあわせると、決して悪い話しだけではないという見方もできる。権利者としてどういう行動をとるかはメリットとデメリットを勘案して考える必要があるなると思う」と指摘。将来的に同サービスが英語圏でデファクトスタンダードとして定着する可能性と、英語圏外にサービスが進出していく可能性も否定できないとし、「権利者、政府がどう考えていくか、ビジネス判断としてこのサービスにどう乗っていくか、今後サービスが広がって行くと思われるので、継続的に研究していきたい」と述べた。また松田弁護士は「Googleがもし世界中の書籍を一元的に管理したいと思ったら、今回の和解の後にもっとデータを蓄積してくる。訴える人が出てきたら二次、三次の同種の和解をしていく。そのうちには新刊のパートナーシッププログラムを結ぶ出版社も出てくるかも知れない。そのときにはもっと大々的なビジネスになるかも知れないので、戦略の読みが必要」と指摘。さらに、「最大の問題は日本の書籍も米国のGoogleにアクセスした方が、入手しやすいと国民が考えたらどうなるか。これはビジネスモデルとしてつくっているが、その情報が公開されるか、Googleが独占しないか、情報によって競合を排除していないか、という問題は全く考えていないが、そこに問題がある可能性があるのではないかと思っている」と述べた。今回の解説は、『NBL』(商事法務)の5月15日号、6月1日号に上下として掲載されることが紹介された。