東京組合新年会、300人が参加 相賀社長が変化への取り組み

2008年1月22日

 東京都書店商業組合は1月17日、東京・文京区後楽の東京ドームホテルで新年懇親会を開催、出版社から約150人、組合から約150人のあわせて約300人が参加。来賓としてあいさつに立った小学館・相賀昌宏社長は、新古書やレンタルコミックなどの変化に積極的に取り組む姿勢が大切だと指摘し、「私はどちらかといえば変化する方を応援する側に立ちたい」と述べた。また、TS協組の片岡隆理事長は草思社支援フェアへの参加を呼びかけた。

 大橋信夫理事長は、東北大学の川島隆太教授が、音読が脳の前頭前夜の活動を活発にしてアルツハイマー症の治療に繋がると述べたことにふれ「アルツハイマー症の改善には本の音読。これを皆んなで大いに言って、実行に移して本が沢山売れるようにしていただきたい」と述べた。

 相賀社長=下記=に続いて、日本書籍出版協会・小峰紀雄理事長が「大事なことは活字文化を振興して、読んでもらって届けていくと、これが一番の基本だと思うので一緒に皆さんと頑張りたい」とあいさつ。

 次に文藝春秋・名女川勝彦取締役が、受付で配布した冊子「これで雑誌が売れる!!」について、「雑誌を売ることで書店店頭の経営状態の安定化を図る目的で作ったので、ぜひお目通しを」と呼びかけた。

 取次を代表して栗田出版販売・郷田照雄社長が「この業界は総論賛成各論反対でそれなりに発展してきた。ここまで来たら各論で一点一点つぶして書店さんに勝ち残っていただこうという年ではないか」と述べ、乾杯し歓談となった。

 歓談の中、TS流通協同組合・片岡隆理事長が登壇し、設立以来のTS協組に対する草思社の協力と草思社応援フェアにふれ「我々がお世話になり、いい本を出している出版社には全面的に協力していく。東京組合・大橋理事長にもこの考えの理解を得て組合員にもFAXで参加を要請する。先着160セットまで可能なので、ぜひ参加を」と呼びかけた。

 小学館・相賀昌宏社長あいさつ要旨

 現在の出版界のシステムは50~60年でできたもので、これが終着点ではなくて、多分これからまだまだ変わると思うが、皆さんはこれがずっと続くと思い込みすぎているのではないか。その想いが強いと新しい動きがあったときにどうしても取り付きにくく、敵視したり、無視したりする。そのうちに今は新古書店、コミックのレンタル店が増え、その中で新しい読者が育っている。

 また、郊外型書店、大型チェーン店、ショッピングモール内の大型チェーン店が3600億円の売り上げで伸びている。他の部分は足踏み状態、1000億円くらいのネット書店が少し伸びている。

 郊外型の読者は10~30代、女性で子連れが多く、そこで売れているリストを見ると色々なキーワードが生まれてくる。我々はそういう市場の変化に対応しながら本を作っていかなければいけないし、そのときに地域型の独立した中小書店にどういう商品を送らなければならないのか。

 読者は必ずある本を読んでいるうちに別な物を見たくなる。その変化の中で書店自らが今までは敵視していたブックオフやレンタル店を自らの中にどうやって取り組むかの時代に来ていて、組合には仲間が揃っているけれども、同時に全く違った人たちとのつきあいも大事になってくると思う。そういう人たちの話を聞きながら、学び、取り込み、勝ち抜いていく時代が来ている。

 今色々な変化を書店も取り組んでいる。東京堂書店も三省堂書店もいろいろとやっている。ところがそういう変化に取り組むと心配する声も強まって、秩序を壊すとか、何でもありの時代になったとの揶揄が出たり、取り組んでいる人たちがいつか失敗すると冷ややかな目で見ている。変化は勇気のいることだと思うが、そういったことを応援する気持ちも一方で持っていなければいけない。

 怪しからんという人たちは、今の体制がずっと続いていればいいと考えているのだろうが、どう見ても今のまま続くとは思われない。今年は厳しいと言うが、変化は厳しいからこそ変えられる。毎日の平凡な生活こそ幸せだが、その中で将来を変えるために一歩踏み出していく、今年はそういうことをやっていきたいし、あるいは孤独な戦いをしている人たちを応援するのがまさにこういう組合であり仲間ではないか。

 もちろん出版社の中にも賛成する人も反対する人もいるが、基本的には何人かが賛成をしながら、危惧をされる方とは話し合って、お互いに一歩踏み込む年になったらいいと思うし、私はどちらかといえば変化する方を応援する側に立ちたいと思っている。

 書店は版元、取次のために生きているわけではない。本来この仕事は、素晴らしい読書環境を日本だけでなく世界中に向かって広げていけるくらいの仕事だと思っている。余り悲観的に考えずに、むしろ大きな夢をどうやって実現するか、そういうことをいつも話し合っていくことが、業界を強くしていく道だと思っている。