米国マンガ市場の立て役者が語る 青山BCでVIZの堀淵氏トー

2006年10月26日

 "青山ブックセンターは10月24日、東京・渋谷区の本店で、米国の日本マンガビジネスを立ち上げた堀淵清治氏(ビスメディア共同会長、ビズピクチャーズCEO)と、賀川洋氏(洋販社長)のトークセッション「欧米における出版ビジネスとJ-POPカルチャー」を開催した。

 

 堀淵氏は大学卒業後に渡米し、小学館・相賀昌宏氏(現社長)と出会ったことで、86年に日本のマンガを出版するVIZコミュニケーションズを設立、ほとんどゼロだった市場を開拓してきた。このほど自身の活動について書いた『萌えるアメリカ』(日経BP出版センター)を刊行した。

 

 堀淵氏はマンガ出版を始めた当初は出版のノウハウも持たず、「日本でこれだけ受けているものが米国人にわからないはずはない」という思いだけだったという。87年からマンガの出版を始めたが、当時はマニアの専門店しかチャネルがなく、一般書店に並ぶまで10年かかったという。

 

 マンガの体裁も当初はアメコミと同じ大判で、フィルムを裏焼きして左開きにしていたため、発行を断る作家も多かったという。ただ、専門店(コミックショップ)はニッチな市場だったが、毎月注文があって買取仕入(正味は40%)をしてくれたのでビジネス的にはやりやすかったと言うが、閉じた市場だったので90年代にチャンネル自体が縮小していったという。

 

 コミック市場の限界から一般書店への進出の必要性を感じていた堀淵氏は、まず「まったくビジネスにはならないとわかっていたが」写真集を英訳して一般書店ルートに流したという。その頃に日本の「ステレオグラム」がヒットして、書店への足掛かりをつかんだ。

 

 ただ、巻数ものの経験がない米国の書店からは、続巻でもすべて新刊としてマーケティングするよう求められたという。また、年2回のシーズン制などがあり、「日本のように出せば売れる制度がない」ため苦労したという。

 

 03年には集英社の出資も受けて「少年ジャンプ」の英語版を創刊、05年には少女マンガ誌「Beat」も出した。「JUNPU」は30万部を発行し、実売20万部のうち10万部が定期購読だという。

 

 米国の雑誌は通常80%程度が定期購読で広告が主要な収入だが、マンガの雑誌は「広告は取れないのでビジネスモデルは雑誌を出して単行本で収益をあげる形。雑誌だけでは未来永劫黒字にはならない」と述べた。

 

 また、02年頃から少女コミックの市場が拡大し、書店のマンガ(グラフィックノベル)の棚が倍増。もともとマンガ読者の4割が女性だったのでポテンシャルは高かったという。

 

 米国でマンガ市場を2分するTOKYO POPについては、「我々が小学館、集英社の男子向けに強かったので、TOKYO POPは少女向けでシェアを伸ばしていった。それに刺激されて我々も『Beat』を出した。少女マンガ市場は彼らがいなければここまで拡大しなかっただろう」と競争によって市場を拡大してきたと説明した。

 

 昨年11月には小学館の100%出資でVIZpicturesを設立、日本映画の配給と専門映画館が入ったエンタテインメントビルの運営に乗り出すという。「日本のPOPカルチュアが浸透し、マンガ、アニメの先にある文化をみたいという若者が増えている。日本映画がひとつの切り口になる」とみており、昨年は「下妻物語」、今年は「電車男」を公開し上々の反応を得ているという。 さらに今後注目するジャンルとしてライトノベルをあげ、「アニメ、マンガ、ゲームの要素が入っている子ども向けコンテンツなので、いずれ必ず市場が拡大する。戦略を持ってしっかりやるべき」と述べた。

 

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