【セルフレジ特集2023】サインポスト 消費者の使い易さを追求した書店特化セルフレジ 防犯タグ対応機能6月リリース予定

2023年3月14日

 書店で導入が進むセルフレジ。省人化で得られた時間を品出しや店頭販促に注力できるようにする大きな目的のために主にチェーン書店で活用が進んでいる。そんななか、無人決済店舗「TOUCH TO GO」の生みの親でもあるサインポスト株式会社は、書店に特化したセルフレジを開発、導入を促進している。導入後の運用方法もコンサルティングすることで、書店の効率的な運営を支援している。

 

冨澤一憲常務(左)とイノベーション事業部の鵜飼篤執行役員(中央)、小嶋隆裕マネージャー

 サインポストは創業当時から「レジ待ちをなくしたい」との強い課題意識があり、2017年には無人AI決済システム「スーパーワンダーレジ」を使い、無人AI決済店舗の実証実験を大宮駅で実施。さらに2018年には性能を向上させ、第二弾の実証実験を赤羽駅で展開。

 

 その後、2019年にJR東日本スタートアップ株式会社と合弁会社「株式会社TOUCH TO GO」を設立し、日本で唯一実用化されている無人決済店舗システムを展開している。

 

 同社の開発視点は常にユーザー。あたりまえのことだが、消費者にとって便利なものでないと世の中には普及しない。

 

 つまり、消費者の利便性を高めることこそがセルフレジにとって最も重要であると考えている。

 

複数書籍のバーコードを瞬時に読み取る書店向けレジ

 

複数冊数を瞬時に読み取り

 

 書店特化セルフレジについては、開発前の19年から20年頃に、ハンディスキャナタイプのセルフレジを導入していたある書店をみると、購入者だけでなく店員さえも読み取りに苦労していた。これでは消費者にとっても店員さんにとっても不便すぎて誰も喜ばないのではないか?と、書店に適したセルフレジの必要性を実感した。

 

 そこで書籍特有の2段バーコードを一括で読めるようにと開発し21年にリリースしたのがワンダーレジ-BOOKだ。特徴を一言でいうと、書店におけるもっとも多い購入パターンである「本のみ、かつ3冊以内」の消費者が簡単に使えること。8~9割に達するこの購買パターンのお客様の利便性を高めることで、セルフレジオペレーションの全体がスムーズに流れるようになる。「老若男女誰でも簡単に使える使いやすさ、面白さ、早さなど総合的な体験価値で差別化できている」と冨澤一憲常務は話す。

 

 ワンダーレジ-BOOKは横50センチ、縦60センチ、高さ60センチで台形型。42センチ×35センチの商品置き場の上に書籍のバーコードが見えるように置き、冊数表示ボタンを押すと上部の読み取り用カメラが認識。2秒もかからずに合計金額が表示される。複数の書籍・雑誌を一度に読み取るため手間が限りなく少ない。決済は現金、クレジットカード、交通系含めた電子マネー、各種バーコード決済に対応する。

 

防犯タグ除去に加え、各種POSシステムとも連携可能

 

ワンダーレジ-BOOK防犯タグ

 

 セルフレジのもう一つの課題は防犯タグへの対応だ。現在、書店業界に限らず防犯タグを付けた商品をセルフレジで会計する際、消費者に外す、あるいは解除をゆだねているケースが多い。これでは手の内を明かしているようなもの。サインポストではこういったお悩みに対しても素早く対応している。安価な貼付け型の防犯タグを商品に装着し、商品を「ワンダーレジ-BOOK」の商品置き場に載せて清算するとタグを無効化出来る機能だ。万引き等の課題を抱えている場合には気軽に相談してみるのも良いかもしれない。

 

 また、販売データとの共有も完備している。販売情報や在庫管理システムを提供する文献社とはすでに連携しており、今後も書店POSシステムにおける業界主要事業者とも商品マスタや販売データを中継しデータ連携していく予定だ。

 

 筐体はSDGsに配慮したスウェーデンで開発された環境にやさしいエコロジー素材「Re-board」を採用。デザイン性も差別化の一つと考え、自社のコーポレートデザイン以外にも作家のサインを入れたりキャラクターコラボもでき、個店ごとに自由にデザインすることもできる。

 

 将来的に書店版「TOUCH TO GO」といった新たな書店形態も可能性の一つとしてあるという。

 

大垣書店など3店舗で導入

 

 現在まで導入している店舗は大垣書店イオンモールKYOTO店、イオンモール京都桂川店、教文館の3店。導入に向けての営業で冨澤常務が書店業界について感じるのは、「業績が厳しいとか『このままじゃ生き残れない』と真剣に考えている書店さんが多いこと」だという。ゆえに「私たちは、少しでも力になりたい。その為にはリアル店舗の意味や意義を徹底的に考え、ECと共存できる形態へと変化していくことが重要で、体験価値の向上とそれを生み出す原資となる省力化した未来型店舗への転換が必要。それをサポートし、業界全体が上昇へと転じることに貢献したい」と語る。

 

 ワンダーレジ-BOOKの導入促進と同時に注力するのが、実際の運用面でのコンサルティングだ。「セルフレジは設置場所、動線、案内POP、声の掛け方で利用率に大きな差が出る。また、手順においてもまずは利用率を上げ、上がった結果をもって人員の最適配置を策定しローコストオペレーションを構築していくことが肝要」(冨澤常務)。導入後、スムーズにセルフレジへの利用移行が進むように、レジ動線の作り方や接客マニュアル、利用率などのKPI設定にも協力していく。また、チェーン店だけでなく、小型店においてもローコストでの運営は可能だとみている。

 

 ワンダーレジ-BOOKの利用料金は月額3万8800円(5年契約・付属品除く)。今なら月額利用料(レジ本体)でのテスト設置に関しても相談できるそうだ。

 

書店向けのセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」Youtube紹介動画

 

サインポスト製 WONDER REGISTER導入事例紹介

大垣書店イオンモールKYOTO店

複数商品スキャンが魅力、より丁寧な接客を意識

 

 大垣書店が2010年、京都駅南側のイオンモールKYOTO Kaede館2階にグループ最大規模の1000坪でオープンしたイオンモールKYOTO店。立地の利便性から学生、ファミリー層を中心に、インバウンドを含む観光客と幅広い客層を受け入れ、平日、週末問わず店内は賑わいを見せている。

 

大垣書店イオンモールKYOTO店

 

 同社は早い段階から、人件費高騰の問題などに危機感を抱き、効率化の必要性を模索。打開策の一手として昨年、セルフレジの導入に踏み切った。 

 

 サインポスト製のワンダーレジ-BOOKは「設置型AIレジ“ワンダーレジ”の書店版。多くの食品スーパーで導入している購入商品を1点ずつバーコードカメラにかざす、またはハンディタイプのバーコードリーダーとは異なり、ワンダーレジの箱型盤面に商品(書籍・雑誌)を置くだけ。さらに複数の書籍・雑誌でもバーコードを上部のカメラに見えるよう、ずらして配置すれば読み取ることができる。サインポスト社内のテストでは最高41冊まで認識できたという。大垣書店サイドは、この点が大きく省人化・省力化につながるとして、採用を決めた。

 

本を置き、簡単なタッチパネル操作で精算できる

 

将来必須のシステム

 

 39店舗を展開する同社だが、手始めに昨年3月からイオンモールKYOTO店で試験運用を開始。同店が選ばれた理由について、イオンモールKYOTO店・片桐明店長は「省人化の点では、やはり多くのスタッフがいる大型店に限定される。そして、セルフレジは各店にとって初めての経験。不安もあり、希望する店舗、店長は少なかったとし、「ただ、自分としては将来的に必ず有効となるシステムだと考え、真っ先に立候補した」と話す。

 

「導入しないと書店は損をする」と片桐明店長

 本格導入までのテスト期間は苦労も絶えなかったといい、「プログラム的な問題、操作性、表示の仕方、読み込みスピード、自動釣銭機との連動、全体的な精度等々、問題点は数えきれなかった」と振り返る。「しかし、その都度、サインポストの担当者が迅速に対応していただいた。性能的な問題だけでなく、動線に配慮した設置場所や並び位置についても一緒に考えてくれた。ときには1週間連続で、ほぼ常駐に近い状態で通ってくれるなど申し訳ない思いもあったが、こちらも後ろには大切なお客様が控えているので妥協はできない。おかげで無事に昨年10月の本格稼働を迎えることができた」とメーカーのフォローに感謝を表す。

 

内製に強み持つサインポスト

 

 サインポストAIレジ部の小嶋隆裕マネージャーは「当社は社内にエンジニアを配し、製造、メンテナンスなどすべてにおいて内製化しているのでスピーディーに対応できる」と、万全な体制を強調する。「なにより、書店ではまだセルフレジ導入店が少ない中、いち早く手を挙げてくれた大垣書店さん、片桐店長の要望に応えなければという思いが強かった」と使命感を示す。

 

 本格導入前は対面レジ6台を設置していたため、フル稼働の際は6人の人員が必要だったが、セルフ導入以降、対面レジは2台(2人)、セルフのアテンドスタッフは1人(混雑時2人)体制となり、省人化に大きな効果を発揮している。

 

 片桐店長は「人を減らすというネガティブなイメージではなく、そのマンパワーを売場やお客様からの問い合わせなどに向け、売上拡大につなげることが最も考えている部分」と狙いを話す。また、「省人化が達成されたといっても、従来のカウンター越しでの接客と、セルフでお客様の横に立っての補助、接客はまったく異質なもので戸惑いもあった」と話す。「よく言えば、カウンターという壁が取り払われたことにより、お客様と、より親近感が湧き、次回の来店につながるメリットがある。一方でセルフレジを選ぶ人は『買った商品を見られたくない』や、放っておいてほしい人も少なくなく、お客様との距離感が大事」と、操作指導の難易度は低いものの、「横に立っての接客」という未経験のサービスに難しさがあるという。

 

 本格導入から約5カ月、現在は各スタッフ「横に立つ接客」においてもスムーズに進行し、さらにセルフレジ設置場所が外から入店する際の入口付近という点から片桐店長は「店が広いので、店員に質問したい来店客も多いが、すぐに店員が見つからないケースもあった。今はセルフのアテンドスタッフがそこにいるので、お客様も声を掛けやすく、スタッフも即座に『いらっしゃいませ』とあいさつできる」。利便性、効率化以外の相乗効果も生まれている」と手応えを語る。

 

セルフレジコーナー(奥は従来の対面レジ)

レジ操作の様子を見て声をかけるスタッフ

 

マニュアル作成で他店導入視野に

 

 サインポスト小嶋マネージャーも導入時は連日、同店に通い詰めていたことから「大垣書店のスタッフはみなさん優秀。書店は受け身の営業と言われるが、ここではスタッフから積極的に来店客に声を掛けている。その接客がセルフレジ導入により、さらに磨きがかかったという点はメーカー側としても誇らしい」と喜びを表す。

 

 片桐店長は最も改善された業務について、レジの開店前準備と閉店時の精算作業を挙げる。「有人レジはこれらの作業に1時間程度費やしてしまい、違算が発生することもある。しかし、セルフは6台すべてでも5分で終わり、コンピューターで自動計算され違算は皆無。この点だけでも導入して間違いなかったとことが証明されている」と断言する。設置においても広いスペースは必要なく、片桐店長は「大きな在庫数減にはなっていない。しかし、せっかく有人レジのスペースを小さくできるので、売場を広げることも可能。改修工事が必要なため簡単ではないが、アイデア、工夫次第でいろんな使い方ができる」スペースの有効活用も見据える。

 

 セルフレジのアテンドをしていた弓島眞生さんは取材に「日に日にセルフレジ利用者は増えている。高齢のお客様でも少し教えると、『意外に簡単だね』と言う人が多い。前に補助したお客様が次回来店時に一人でセルフを使っている姿を見ると少しうれしくなる。店長も言っていたけど、機械化したからこそ、より丁寧な接客を心掛けたい」と話してくれた。

 

 最後に片桐店長は「本格導入まで大変な道のりだったが、まだ完成形ではない。従業員が多い店舗なので全員のコンセンサスを図って、誰がサポートしても適応できるような体制を築く。書店にとって導入しないと損なシステム。当社他店でも運用できるようマニュアル作成を進めている」とさらなる発展を目指していた。

 

 今年1月からはイオンモール京都桂川店(京都市南区)でも運用を始めている。