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読書猿(『問題解決大全』)×原田まりる(『まいにち哲学』)対談

2017.12.21

読書猿さん(左)と原田さん

問題解決、哲学、過去の知恵の入口に

 フォレスト出版から『問題解決大全』を刊行した書評ブロガーとして知られる読書猿さんと、ポプラ社から『まいにち哲学』を出した元アイドルで作家の原田まりるさん。まったく違う背景を持つふたりだが、それぞれの書籍では、過去の膨大な本から得た知恵をいまの人々に伝えようという姿勢が共通している。本を書いた動機や、書店について語ってもらった。(編集部)

――それぞれ本に込めた思いをお願いします。

読書猿 欲しい問題解決の本がなかったというのが動機です。本当に使える本を作りたい、そして問題解決はもっと深いものじゃないかという思いがありました。

 例えば、僕らが今いる建物も、コンクリートや鉄筋を発明した人が居て成り立っている。それは全部問題解決です。そういう意味で、無数の人々の問題解決のうえに現在があるのです。

 単にテクニックだけではなく、問題解決の歴史に意識を払えば、自分も問題解決できるし、読んだあとも続けていけると思い書きました。

原田 私は高校生のときに、尾崎豊の影響で哲学を好きになったんです。

 尾崎の歌詞に、「自由」とか「生きること」みたいな言葉が書かれていて、どうすればそんな問いの答えを知ることができるのかが、そのの頃は分からなかった。

 そんな頃にたまたま哲学の本を読んで、そういうことがテーマになっていることに気が付き、哲学が好きになりました。

 ですけど、普通は興味がななければ、書店の人文コーナーにはなかなか行かないと思います。いろんな哲学の本がたくさん出てますけど、そういう本は理解するのにハードルが高すぎます。

 私自身、好きになってから本格的な哲学書にたどり着くまで、まず入門書から入り、枠組みを理解したうえで読めるようになったという経験があります。

 友達と普通にしゃべっているときに、「まりるちゃんって、哲学に詳しいんでしょう。恋愛に効く風水、教えて」と言われたことがあって、「ああ、そういうレベルなんだ」と思ったんです。

 そういう人にも、このアーティストの音楽がいいというようなレベルで、哲学のことを伝えたいと思いました。

 そのためにはどうしたらいいのか考えて、タロット占いじゃないですけど、哲学の格言が366日分、日めくり形式で入っている形式にたどり着きました。

この本から他の本に広げてほしい

――両書とも、過去の膨大な知恵を伝えていこうとしているところは共通していると思います。

原田 不易流行ですね。

読書猿 僕は人生論とかがあまり好きではありませんけど、必要だとは思います。

 考えを変えるだけで人生が変わるわけはないので、本当に変える問題解決の本を作ればいい。しかし、悩んだり、困っている人は、問題解決の本を手に取らない。

原田 もっと優しいポエミーな本とかですね。

読書猿 そう。やっぱり言ってほしい言葉を本の中に見つけたいと思うじゃないですか。

 でも、それが結果に結び付かないと、取っ換え引っ換え中毒のように、ドクターショッピングならぬ、ブックショッピングになって、その人の人生は何も変わらない。

原田 同じジャンルの本を買い続けるってことですね。

読書猿 おこがましいですけど、その悪循環をどこかで止められないかと思って書いたのが『問題解決大全』です。

 この本には過去に問題解決をした多くの人が出てきますが、そういう人たちの本を読んでほしいと思っています。こんな小さい本に、問題解決の全てを書けるわけはありません。ここからスタートして、読んだ人が扉を開けて、次の本、次の本、あるいは、本以外のことにも広げていってほしいと思っています。

思考がすっきりする『問題解決大全』

原田 私は読んでいて、救急箱のようだと思いました。中でも「ロジックツリー」が面白かった。

 「ロジックツリー」という言葉は知りませんでしたけど、前からやってたことが、こうすればよりスムーズに進むんだというような、成功法を教えられたというか、草野球しかやってなかったのが、初めてコーチを付けてもらって、「ああ、なるほど」みたいな。すっきりしたという感じがすごくしました。

読書猿 確かに「自分でやってたことに名前が付いてる」という反応があります。

 『まいにち哲学』の6月3日にアランの「幸福論」で、ふさいだ人に「遠くを見ろ」という言葉が出てきますが、これは、『問題解決大全』では1項目の「100年ルール」です。

原田 それを読んだときに、ラッセルの、自分が講演会とかで失敗しても、別に宇宙の何も変わらないという言葉と似ていると思いました。読みながら、「なるほど」とつなげて考えました。

読書猿 つながりができてくるというのは、紙の本だからだと思います。そういうふうに使ってもらえたらいいですね。

「情報の貧者」にも届く『まいにち哲学』

――『まいにち哲学』は偶然ぱっと開いたところを読むという読み方もできますね。

読書猿 本を開いた所を読んで、それが今日の運勢という「開典占い」が世界中にあるんです。最初からランダムアクセスを前提に書いている本って面白いと思います。

原田 読み手主義です。写真を撮ってSNSにあげてもらうことも想定しています。

読書猿 私の誕生日の言葉はこれって流したりできますね。

原田 そうです。この本は情報量の少ない人に、より読んでもらいたいと思います。『問題解決大全』の9番目の手法「文献調査」にあるような。

読書猿 「文献調査」は図書館学で問題になっていることです。

 そのなかで「情報の貧者」という概念があります。自分が何を欲しいかをオープンにしないから情報が入ってこない。情報が入ってこないから、ますますオープンにしないという悪循環になってしまう。でも、どこかで成功体験があると、好循環が回っていきます。

 本を読めない子どもの周りにはテキストがないことが多いといわれます。本も、カレンダーすらない。そういう子は、文脈を読み取ることが難しい。『まいにち哲学』はそういう人にも届く本だと思います。

原田 実はこの本を書くときに、世間的には高学歴に入るような友達に、哲学者の言葉をいくつか見てもらったんです。そうしたら、意味が分からないという。文章は読めても、何を言っているのかが分からない。

 そういうレベルの人でも、ぴんとこないのかと思ったので、ページの下にその項目を表す見出しになるような言葉を入れました。読むのを諦めかけても、なるほどと思ってもらえるようにしたんです。

読書猿 哲学書はやっぱり難しい。ただ、一方で、知らないのはもったいない。それをどうつなげていくのか、一つの回答をこの本で出されたと思います。

段階経て哲学書へ

――原田さんは尾崎豊から、いきなり哲学書に入っていったんですか。

原田 初めに読んだ中島義道先生の本に哲学者の言葉が引用されていて、そこに出てくる人の本を買ったんですけど、やっぱり読めず、入門書とか、土屋(賢二)先生など哲学者が書いているエッセーから入って、ちょっとずつ登っていったという感じです。

読書猿 そこまで行くのに階段が何段もある。それを一歩一歩登ったのはすごいですね。

原田 これを普通の友達とかに、「どう思う?」と聞くと、かなり嫌がられます(笑)。

読書猿 実は僕も大学では哲学を勉強しましたが、哲学というのは、友達をなくします(笑)。

原田 哲学者の苫野一徳先生が言っていたんですけど、哲学が広がらないのにはいくつか理由があって、一つは、専門家の中でやりとりをする、もう一つは、横文字を並べたら格好いいみたいな知的虚栄心が大きいと。

読書猿 それはあります。

原田 エスプリが効いただけの言葉のやりとりが素敵という風潮ができたから、内輪ネタみたいな盛り上がり方をして、あまり開かれなかったと。だからこの本は私の中では哲学界に対する反逆的な意味もあるんです。

読書猿 哲学書コーナー、全部これになったらいいじゃないですか。

原田 いや、普通の哲学書も読んでほしいです。

――お二人とも、書店にはよく行かれますか。

原田 はい。市場調査という感じで、みんながどんな本に興味を持っているのか、把握しておきたいので見に行きます。

読書猿 ある人が言っていたんですけど、日本の新刊書店はすごいと。

 例えば、大阪の堂島にあるジュンク堂書店にはフィヒテ全集があるんです。図書館じゃないのに、地味な哲学者の全集をきちんと在庫している。それは日本の書店のレベルの高さだと思います。

原田 あと、アマゾンとかで買おうとすると、同じレーベルから何が出ているのか全体が分からないので、書店に行くしかないです。

読書猿 「点の読書」ではなく、「線の読書」、「面の読書」というか、本と本がつながって線になる、その線が交差して面をつくる。

 棚の一点を見たときに、その本の周りにある本をどれだけ見せてくれるのか。僕は図書館の棚を思い浮かべて思考することが多いのですが、書店でもそれができると思います。僕が書店に期待するのはそこです。

 ある書店の料理本コーナーは、著者の出身地順に並んでいる。それで新しい料理本に出会える。これは図書館ではできないですね。本と料理の両方を分かっている書店人がメンテナンスしているから成り立つ棚です。

 例えば、ヴィトゲンシュタインの「言語論」の本を、言語論の棚に置いていたら腹が立つわけです。分かっている人が作った棚は、分かります。そういう書店で本に出合いたいと思います。

――書店でこの2冊の周りに、中に出てくるいろんな本を並べるといいかもしれません。

読書猿 そういう棚があるとすごくいいですね。本と本がつながり合っているような。

書店が置く場所見たい

――それぞれの本を書店にはどう売ってほしいですか。

原田 この本は哲学と書いてありますが、哲学を知らない人向けに書いたので、自己啓発とビジネス書のコーナーに置いてください。

読書猿 僕は、人文書コーナーに置いてほしいです。ただ 書店が「うちは、この本をこう売るんだ」と置きたい所に置いてもらえたらいいと思います。

 また、著者のわがままですけど、いろんなカテゴリーに分類できる本だと思います。ビジネス書でもありますし、自己啓発でもいい。哲学書に置いてもらってもいい。

原田 私、レジ横がいいです(笑)。

読書猿 どこに置いてもらうかで、その書店がこの本をどう見てくれているのか示してもらえる。自分の本が書店のどこに置いてあるのか、見るのを楽しみに通おうかと思っています。

――どうもありがとうございました。

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 問題解決や創造性研究に関わる心理学研究やビジネスの実践はもとより、哲学、宗教、神話、歴史、経済学、人類学、数学、物理学、生物学、看護学、計算機科学、品質管理、文学などに由来する37の技法

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 日々、直面する悩みや葛藤に向き合うヒントになるような哲学者たちの格言を、1日1蓮■鰻遒ら12月まで366日分を収録

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